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トッキー
2022.9.12 11:16メディア

「一般的道徳」って、何だろう?

昨日の道場の最後の方でよしりん先生に言われたことを受けまして…

表現者クライテリオンは、いい雑誌だと思います!
特に、いわゆる保守論壇誌がみんな「保守カルト」化していく中で、若手の保守系知識人が言論を発表できる場は実に貴重です!

その「表現者クライテリオン」がよりよい雑誌になってほしいと思うからこそ指摘させていただきますが、7月号の巻頭コラム「鳥兜」は、映画監督・河瀨直美氏が東京大学入学式で行った祝辞を何故かものすごく評価していて、こう書いています。

〈前後の文脈を踏まえれば、この監督が述べているのは、われわれ人間は他人の「悪」を声高に非難するとき、その背後にある複雑な事情を度外視したり、自らの内なる悪を黙認したりしがちであるから注意せよという、一般的道徳に過ぎない。〉

そして、これを「世界の警察を気取る国際政治学者」「いわゆる『炎上』に仕立て上げた」と非難し、その筆頭が慶應大の細谷雄一教授だと事実上名指しし、細谷氏のこのツイッターを引用して非難しました。

しかし、その引用の仕方が大問題です。
鳥兜筆者は、このツイートの前半の「それにしても河瀬直美監督の祝辞、なぜ人間個人にかかわる一般論に留めなかったのか。それであれば多くが共感したはず。」を、まるっと削除して引用しているのです。

これはどう見てもおかしいです。

鳥兜筆者は、河瀨氏の祝辞が「一般的道徳に過ぎない」として擁護しています。
細谷氏は、河瀨氏の祝辞が「一般論に留めなかった」からとして批判しています。
ここ、意見が正反対です。だったら、論点はそこでしょう?
河瀨氏の祝辞は「一般論(一般的道徳)」の範疇だったのか? それを逸脱していたのか?

ところが鳥兜筆者は、わざわざ真っ向から意見が対立している部分を外し、別の部分を取り上げて、全く的外れの批判(詳しくは前回参照)をしたのです。

鳥兜筆者は、ここが論争になったらすぐ負けると思って、わざと外したのかもしれません。
なぜなら、河瀨氏の祝辞が「一般論(一般的道徳)」の範囲の内か外かという判断は、簡単につくからです。
前半の金峯山寺の話までで止めていれば「一般的道徳に過ぎない」と言えたのですが、「ウクライナ戦争」における「ロシアの正義」という、個別具体的な事例にまで踏み込んでいるのだから、これが「一般論」であるはずがないのです!!

鳥兜筆者は「一般論」って言葉の意味、わかっているのでしょうか?
本当に一度、小学校の国語からやり直したらどうかと言いたくなるレベルです。

河瀨氏は「『ロシア』という国を悪者にすることは簡単である。けれどもその国の正義がウクライナの正義とぶつかり合っているのだとしたら、それを止めるにはどうすればいいのか」とまで言っています。それはもう個人における「一般的道徳」ではなく、主権国家間における具体的ケースの「国際政治学」の話であり、だからこそ細谷氏は国連総会決議のことを持ち出したのです。

鳥兜筆者は「一般論」の意味がわからないというバカと、国連総会決議の意味を知らないというバカを基に、「正義は多数決では測れない!」というバカな批判をしたわけです。
しかもその際に、細谷氏のツイートから肝心なところを省いて引用して批判するというバカまで重ねています。バカの四枚重ねです。

細谷氏は、河瀨氏が国際政治に関する話に踏み込んだのは「軽率であったと思い残念」と評していますが、私は池内恵東大教授と同じで、河瀨氏はもともと「一般論」に留めるつもりはなく、最初から「ロシアもウクライナもどっちもどっち論」を言うつもりだったし、そういうことを言うのが「インテリ」だと思っていたんだろうと見ています。
細谷氏はその点甘いというか、優しい人なんだなあと思いますが、それはまあ、どうでもいいことです。

繰り返しますが、表現者クライテリオンは若手言論人のためにいい雑誌になると思います。
しかしそのためには、7月号の匿名の鳥兜筆者だけは排除しないといけません。
こんなのが上にいたら、若手の成長を阻害してしまいます。

 

【ロシベタクライテリオン論破祭り】
第1回 ウソついて逃げるクライテリオン藤井聡!
第2回 ロシアのプロパガンダを「多面的な解釈」と強弁する藤井聡!
第3回 道路交通法と国際法の区別がつかない藤井聡!
第4回 藤井聡の言う「多面的解釈の外交」とは何か?
第5回 NATOの東方拡大はアメリカの「裏切り」か!?
第6回 確かにアメリカは悪い! けど…?
第7回 ロシア経済崩壊の「主犯」は誰か?
番外編 藤井氏動画コメントに見る、クライテリオン読者・支持者の「程度」
第8回 藤井聡が依拠する、伊藤貫の「国際情勢認識」の正体
第10回 藤井聡氏に小学校の国語のテスト。
第11回 クライテリオンは朝日と産経の「悪いとこ取り」
第12回 ブチャ虐殺を「フェイク」だと思っていた藤井聡
第13回 「魔女狩り」という言論封じワード
第14回 もう一度、道交法と国際法の違いについて。
第15回 藤井聡氏の国際法軽視は西部邁氏の悪影響か?
第16回 明日よりクライテリオン論破祭り、最終章!
第17回 河瀨直美の祝辞はどう見ても「どっちもどっち論」「相対主義」(しかも日本絶対悪主義)だ!
第18回 篠田英朗氏は河瀨直美氏を「魔女狩り」したのか?
第19回 池内恵氏は河瀨直美氏を「魔女狩り」したのか?
第20回 細谷雄一氏は河瀨直美氏を「魔女狩り」したのか?
第21回 国連決議の「多数決」で「正義」は語れない?

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